黄金比の話(1)

黄金比という言葉を誰でも一度は耳にされたことがあるかと思います。その歴史や詳しい説明等はネット検索すれば沢山見つかりますので、 他のサイトにお任せすることとして・・・
ここではエッセンスを交えながら、ギター制作につながる個人的な思いや具体的なデザイン方法を、何回かに分けて、記してみたいと思います。

一般的に黄金比というと、「人が美しいと感じる比率」であったり、「最適な組み合わせ」のように使われているのを目にします。

「美しく感じる比率」と言われればそんな気もしますが、美しさは主観によるところが大きいですからね、さあどうでしょう。レオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザの顔の縦横比は黄金比と言われていますが、モナリザは不思議な表情をもっているものの、私のタイプではありません。(失礼、私の好みはどうでもいいですね)
でも、「安定感」は感じます。「安定感」=「美しさ」という意味では、はやり美しいってことになります。不安定なものは、美しくないですし、 人を気持ち良くさせてくれません。

また、「最適な組み合せ」と言われると、ちょっとそれは違うかな、とも。「この材料とこの材料の組み合わせは、ギター制作における黄金比です」、って言われても、う~ん、という感じです。まあ、どれが正解なんてこともないんでしょうけれども。

そして、自然界には黄金比がいろんな場所に隠れているとも言われています。例えば、植物の花びらの数や葉序パターン、枝分かれの仕方、巻貝の螺旋、ウサギが1年でどのように繁殖するか、DNA配列、このほか沢山の動植物に関して、この比率が関係していることが知られています。

どうして、そんな不思議なことが起きるのでしょうか?

以下、あくまで個人的な見解であり、適当に読んでもらえれば結構ですが・・・

山頂に降った雨は、川を通して低地へ、そして海へと流れ込みます。 風は高気圧から低気圧へと流れ、圧力差を無くそうとします。自然界に存在する多くの物は、何らかの過程を経て不安定な状態(エネルギーの高い状態)から安定状態(エネルギーの低い状態)へと遷移していきます。その結果、たどりつく先が、黄金比という、何か「しっくりとくる器」なのではないでしょうか。コーヒー豆を袋から缶に移す時に、缶の周囲をトントンと叩いて豆と豆の空間ができないようにしていくと、きっちりと収まるようになります。ちょうどそんな営みが、長い間自然界の中で行われ、最終的に黄金比に収束していくように感じます。

つまり、黄金比は、あたかも「無秩序」に見える自然の中に存在する「秩序」なのです。

人間が作り出す人工物は、通常この秩序には合致していませんが、もし、この秩序に従って人工物を制作すれば、それは自然に溶け込んで安定調和したものに通ずるのではないか、そんな思いで、ギター制作に黄金比を取り入れることにしました。

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