インレイ加工の様子を少しだけお見せしたいと思います。
歯医者さんで行う歯の詰め物のこともインレイと言うようですが、ここで言うインレイとは、日本語で言えば象嵌(ぞうがん)という技法のことを指します。象嵌とは、 木、陶磁、蒔絵、彫金等の工芸品を装飾するための技法であり、ベース素材に溝を掘って、その中に別の素材の部品を埋め込んで模様をデザインするというものです。
ギターの場合も、主としてサウンドホール周辺に装飾されるロゼッタで用いられていますが、ヘッドプレート、指板やブリッジにインレイ装飾を施しているものもあります。また埋め込む素材も、貝殻 (アバロン、白蝶貝等) や木、変わったものでは金属などを埋め込んでいるものもあります。
Phi Guitarsでは、ヘッドプレートのロゴマーク、指板のポジションマーク、および、ロゼッタにこのインレイを使って装飾を施しています。また、貝殻のような高級感や派手さはありませんが、素朴で味わい深い、世界各地でとれる銘木を組み合わせて、オリジナルデザインとしています。
この写真(↑)は、TOP板にサウンドホールとPhi Guitarsの標準デザインであるローレル(月桂樹)のインレイ溝を掘っているところです。TOP板は、単板ギターでは1枚の板を本を見開くように薄く切り開いてそれらを接着し、左右対称にして音に対する均一性を保つように作られています。いわゆるブックマッチという方法です。そのようにして1枚のTOP板となったところで、サウンドホールを穴あけし、周辺にインレイ溝を掘ります。TOP板は通常2~4mm程度の厚さが一般的かと思いますが、このような薄い板に1~1.5mm程度のインレイ溝をトリマー等を使って作ります。アップにするとこんな感じ(↓)です。
この溝に、パドウクという赤い木で作ったローレル(月桂樹)の部品をはめ込むとこんな感じ(↓)になります。
貝殻を部品に使った場合は、見る角度によって虹の見え方が変わり高級感があります。木の場合にも、木自体に模様がありますし、色の変化(ばらつき)も、それはそれで趣きがあり、落ち着いた雰囲気を醸し出してくれます。ちなみに、貝殻は固いので部品を削るのはある意味楽なのですが、厚さ1mm程度の薄い木から部品を作るのは結構大変であったりします。薄板はちょっと力を加えすぎるとすぐに割れてしまいますので。
どんな種類の木をどんな形に組み合わせて、どんなデザインにしようか考えるのは、辛くもあり、楽しくもあり、・・・う~ん、やっぱり楽しい方が勝りますね。では。